嫌い嫌い大嫌い
〜届かぬ想い〜










ボクは最近、水辺を見つめる癖がある…

それもこれも、あのヘナチョコユーリが決まって水辺に現れるからだ。

そして決まって水辺から消えてしまう…



ただ水辺を眺めていたってアイツが現れる事は無い。

それは判っている…判ってるんだ。

戻って来る時間と場所は、ウルリーケが見定め、前もって告げられる。

それ以前にアイツが戻って来る事は無い…



でも無意識に見てしまうんだ…

ボクの瞳が、ボクの心が、アイツの姿を、アイツの存在を、探してしまう。



あんな軽薄な男を、なぜボクがこんなにも待ちわびなければならないんだ!

きっと今頃は向こうの世界で、ボクの事など忘れ去っているに違いない…

あぁ、腹立たしい!



「もうオマエなんて戻って来るな!」



帰って来たら帰って来たで、誰にでも愛想を振りまいてボクに余計な心配をかけまくる。



「いったいアイツは何様なんだ!!」



奴はボクの婚約者だという自覚が無さ過ぎる!

なんでボクが蔑ろにされねばならんのだ!

こんなに怒らせる相手はそうそう居ないぞ!

まったくいい度胸だ…



「…ぁあ、くそっ、腹が立つ!」



居たら居たで、腹立たしいし。

居なきゃ居ないで、苛立たされる。

悪循環だ、これならいっそ居てくれた方がまだマシだ。

近くに居れば見張ってられるわけだし!

そうだ、目の届く範囲に置いておくのが一番なんだ。



「ヘナチョコユーリ、早く戻って来い!!」



水面はしんとしたままで、ボクはまた今日も苦虫を噛み潰す。



今度戻って来た時は、もう強制帰還なんて断固させないぞ…



「覚えてろ、どんな手を使ってでも阻止してやるからな」





END